PASMO/Suicaなどの交通系ICカードでは、複数の社局をまたがって利用が可能です。首都圏の場合、相互乗り入れが普及しているため、例えばJR東日本の駅で乗車→乗換改札を経由せず→メトロの駅で下車、ということは日頃からよく行われています。その場合でも自動的に精算され、別の社局で出場したということをあまり意識しないのではないでしょうか? 乗換改札なしにどれだけの事業者を乗り継げるか?ということを調べてみました。
本記事を作成するにあたって次の記事を参考にしました。ありがとうございます。 PASMO大回り - デスクトップ鉄の雑記帳
乗換改札なしの乗継パターン
乗換改札なしに乗り継ぐには以下のパターンがあります。
- 同一ホームで相互乗り入れしているケース(例:渋谷駅 東急東横線・メトロ副都心線間)
- 別ホームに到着するが乗換改札がないケース(例:北千住駅)
- 乗換改札はあるが、相互乗り入れしている電車があるケース(例:西船橋駅 メトロ東西線〜JR東日本総武線)
こちらをまとめると次の図の通りとなります(2022/3/12現在)。
首都圏 PASMO/Suicaノーラッチ乗換マトリクス (ver.20230318) PDF版
色の凡例は以下のとおりです
グレー:PASMO/Suica未導入。他社局と乗換改札なしで利用可
イエロー:PASMO/Suica導入。他局と1つの駅で乗換改札なしで利用可
その他:PASMO/Suicaを導入。他社局と複数の駅で乗換改札なしで利用可
(以下の文章は、2022.3.12改正対応のものです。2023.3.18改正対応を準備中です)
一番多くの社局を経由する経路は?
では実際に一番多くの社局を経由する経路はどの経路でしょうか?
実際に9社局を経由する経路が可能です。例えば以下の例です。
- 新柴又ー(北総線)→京成高砂 1社局目(北総)
- 京成高砂ー(京成本線)→青砥ー(京成押上線)→押上 2社局目(京成)
- 押上ー(都営浅草線)→三田ー(都営三田線)→目黒 3社局目(東京都交通局)
- 目黒ー(東急目黒線)→田園調布ー(東急東横線)→渋谷 4社局目(東急)
- 渋谷ー(半蔵門線)→押上 5社局目(メトロ)
- 押上ー(東武スカイツリーライン)→北千住 6社局目(東武)
- 北千住ー(JR常磐線)→中野ー(JR山手線)→新宿ー(JR中央本線)→中野 7社局目(JR)
- 中野ー(メトロ東西線)→飯田橋ー(メトロ有楽町線)→池袋ー(メトロ副都心線)→明治神宮前ー(メトロ千代田線)→代々木上原
- 代々木上原ー(小田急小田原線)→小田原 8社局目(小田急)
- 小田原ー(箱根登山鉄道線)→箱根板橋 9社局目(箱根登山)
費用の精算について
ではこの経路で乗車した場合にこの経路どおりに精算されるのでしょうか? 答えはNoです。 本来は乗車した経路どおりの費用を精算する必要があります。東京メトロのICカード乗車券取扱規則には以下のとおり書かれています。(PASMOを採用している各社で規則は異なりますが、ほぼ同等の規則がありますので、ここでは東京メトロを例にとります)
第14条 旅客がICSFカードを使用して入場した後、各IC鉄道事業者の定める取扱区間内を連続して乗車する場合、出場時に減額する旅客運賃は、実際に乗車した経路に基づき、各IC鉄道事業者で定める大人片道普通旅客運賃の計算方による運賃の合算額とする。(以下略)
しかし途中乗換改札がない場合には乗車した経路はわかりません。したがって上記の条項については例外があります。
第14条 2 前項の規定にかかわらず、改札機等での旅客運賃の減額は、入場した駅から4社局以内の各IC鉄道事業者の定める取扱区間内を連続して乗車した場合に限る。ただし、5社局以上を連続して乗車した場合であっても、4社局以内を連続して乗車できる経路がある場合には、4社局以内を乗車したものとみなして運賃を減額する。 3 前項で減額するときに、乗車経路が特定できない場合は、実際に乗車した経路と異なる経路を乗車したものとみなして運賃を減額することがある。
乗車券・定期券 Q5. 乗車駅から下車駅まで複数経路がある場合、どのように運賃計算をするのですか? A5. 乗車駅から下車駅まで複数経路がある場合は原則として一番安い経路の運賃をいただいております。
上記の規則やよくある質問の回答から、費用が精算されるのは原則として最短経路となることがわかります。 費用が精算されるの経路は最短経路となることがわかりましたが、第14条 2項に自動改札機での精算範囲は「4社局」内とあります。
第14条 2 前項の規定にかかわらず、改札機等での旅客運賃の減額は、入場した駅から4社局以内の各IC鉄道事業者の定める取扱区間内を連続して乗車した場合に限る。(以下略)
上記のルートの場合、最短の経路を利用した場合に何社局を経由するのでしょうか?
- 新柴又ー(北総線)→京成高砂 1社局目(北総)
- 京成高砂ー(京成本線)→青砥ー(京成押上線)→押上 2社局目(京成)
- 押上ー(都営浅草線)→三田ー(都営三田線)→白金高輪 3社局目(東京都交通局)
- 白金高輪ー(メトロ南北線)→溜池山王・国会議事堂ー(メトロ南北線)→代々木上原 4社局目(東京メトロ)
- 代々木上原ー(小田急小田原線)→小田原 5社局目(小田急)
- 小田原ー(箱根登山鉄道線)→箱根板橋 6社局目(箱根登山)
上記の通り最短でも6社局となるので、自動改札機では精算できないと思われます。
5社局以上の組み合わせ
それでは自動改札機で精算できない5社局以上の組み合わせはどのくらいあるのでしょうか?調べてみると以下の組み合わせがあります。
- 北総・新京成 → 6社局 x6、5社局x8
- 秩父・箱根登山 → 6社局 x2、5社局x9
- 相鉄・伊豆急行・富士急行・臨海高速 → 6社局 x2、5社局x6
- 横浜高速 → 5社局x8
- 京王・京急・京成 → 5社局x6
- 東武(東上系統)・埼玉高速・西武・小田急・東葉高速・東武(本線系統)・JR → 5社局x2
- メトロ・東京都 → 5社局以上なし
秩父・箱根登山・北総・新京成・相鉄・伊豆急行・富士急行・臨海高速を使用する場合に6社局が、それ以外でも5社局の経路があります。該当の例は多くあるように見えますが、普段利用する可能性が少なそうです。 このルートを通った場合、実際に自動改札機がどういう反応するのか気がかりですね。 利用する側も2〜3社局であれば利用することもあるでしょうが、5社局以上となると一般的な利用ではないので、自動改札機で精算できなくても仕方ないのかもしれません。 まとめると、PASMO/Suicaを使用して経由できる最大の社局数は9社局、最短経路で経由する社局の数最大は6社局となります。
注意
実際に乗車する場合には、同じ路線を重複乗車および同じ社局内の同駅を複数回通る経路をとった場合、重複する箇所までで一旦精算となりますので注意が必要です(こちらについて詳しくは「大回り乗車」で調べてください)。内容に誤りがありましたら、ご指摘ください。
変更差分
2013.1.30 2013.1.30現在PDF 初版
2013.3.16 2013.3.16現在PDF 九段下駅の半蔵門線(押上方面)と都営新宿線(新宿方面)のホームの間にあった壁が撤去されたことに伴い、ノーラッチでの乗り継ぎが可能になりました。
2015.3.14 2015.3.14現在PDF 富士急行のSuica導入に伴い加筆
2015.4.15 2015.3.14現在PDF(修正a版) ご指摘を受けて修正(1. 2015.3.14現在版で九段下が抜けてしまったため追記 2.西船橋における東葉高速〜JR東日本間の取り扱いを修正)
2018.3.17 2018.3.17現在PDF 大和駅乗り換え改札設置に伴い相鉄へのノーラッチ乗り継ぎが不可能となったため修正
2019.3.16 2019.3.16現在PDF 下北沢駅改札分離に伴い、小田急〜京王間のノーラッチ乗り継ぎが不可能となったため修正
2019.11.30 2019.11.30現在PDF 相鉄新横浜線開業、羽沢横浜国大駅開業に伴い修正
2022.3.12 2022.3.12現在PDF 秩父鉄道PASMO導入に伴い修正
2023.3.18 2023.3.18現在PDF 東急新横浜線開業に伴い修正